この記事でわかること
暴落時にぶれない買い増し基準 / 資金配分と弾薬管理 / 指標と下落率の使い分け / シナリオ別ルール / 検証手順 / 長期投資の心構え
急落のアラートが鳴ると、どうしても心がざわつく。買う? 待つ? 迷っているあいだに値段は動く。だからこそ“平常時に決めた買い増しルール”が効く。この記事は、数字と手順で感情を封じるための実務ガイドだ。
なぜ暴落時こそルールが必要か
相場が荒れると、人は「損失回避」に傾きがち。含み損の痛みを避けたくて手が止まり、反発が始まると今度は置いていかれる不安で焦って高値を追う。そんな揺れを止めてくれるのが事前に決めた“数値化された行動”だ。たとえば「指数が〇%下がったら〇万円買う」「移動平均からの乖離が〇%なら比率を上げる」といった具体。曖昧さがないほど、暴落の渦でも迷いが減る。ルールは“未来の自分への指示書”。冷静なときに作るからこそ価値がある。
よくある失敗パターン
- 下落率の基準が曖昧で、毎回“勘”で買ってしまう
- 一発で資金を撃ち尽くし、続落に耐えられない
- 指数は下がっているのに、手持ち銘柄の評価損だけを見て固まる
- 「底」を当てにいき、結果としてノーポジのまま反発を眺める
回避するには、基準・配分・回数を先に決め、毎回それに従うこと。裁量の余地を狭めるほどミスは減る。
買い増し判断の基準(下落率 × 指標)
“下落率”だけで突撃すると、リスクの顔が見えづらい。そこで指数の下落幅とバリュエーション指標を掛け合わせ、段階的に買い付け強度を変える。シンプルでいい。複雑な指標は熱い相場で使いこなせない。
トリガー | 指標の目安 | 行動 | 意図 |
---|---|---|---|
直近高値から -10% | 指数が200日線付近 | 通常の買い増し量 ×1 | 景気後退かはまだ不明。小さく入る |
-20% | 出来高増、VIX高止まり | 買い増し量 ×2 | 調整から弱気へ。弾薬を厚めに |
-30% | 広範な売られ過ぎ | 買い増し量 ×3 | 恐怖がピーク。計画最大ロットで対応 |
個別株なら「業績の下方修正・負債過多・破綻リスク」などのチェックも必須。指数連動(全世界・米国ETFなど)なら、上のテーブルのような“機械的な段階買い”との相性がいい。
資金管理のフレーム(弾薬3分割)
どんな名ルールも、弾薬が尽きたら終わり。おすすめは“3等分の弾薬管理”だ。現金(または短期債)を暴落対応のために3つに分け、トリガーで段階投入する。弾薬は口座内で別メモにしておくと、焦って通常積立に流用しづらい。
- 通常の積立とは財布を分ける(証券アプリ内でメモ)
- 弾薬A:-10%で投入/弾薬B:-20%/弾薬C:-30%
- 各投入は“同一銘柄・同一金額”で。迷いを残さない
“余力を残す”クセがつくと、底探しのストレスが減る。次の弾がある安心感は、暴落時の最大のライフハックだ。
買い増しルールの設計例(そのまま使える)
指数連動ETF(例:全世界・米国)を想定したミニマム設計。慣れたら自分流に微調整しよう。
項目 | マイルール |
---|---|
対象 | 長期コアのインデックスETF |
通常時 | 毎月の自動積立は継続 |
トリガー | 直近高値から -10/-20/-30% |
投入額 | 各段階で通常積立の 1/1/2 ヶ月分 |
回数制限 | 各段階で1回ずつ(合計3回) |
例外規定 | 重大バッドニュース発生時は次段階まで待機 |
簡易シミュレーションで検証する
ルールは作って終わりではない。過去の急落区間に当てはめ、数字で手応えを確認する。紙と電卓でもいい。むしろアナログのほうが記憶に残る。
- 過去3つの急落区間(例:コロナ初期、米金融不安、年初急落)を選ぶ
- 各区間で-10/-20/-30%のタイミングと終値を記録
- 弾薬A/B/Cの投入額で“取得単価”と“回復時の含み益”を試算
目的は“勝てたかどうか”より“ストレスに耐えられたか”の確認。やってみて不安が残るなら、投入額や段階数を下げる。運用は継続がすべて。
落とし穴と回避策
- ニュースに合わせて基準をコロコロ変える → ルールは月次でしか改定しない
- 一銘柄に弾薬集中 → コア(指数)7:サテライト(個別・セクター)3を目安
- 反発初動で利確してしまう → 反発後の売却ルールは“全体の比率”で決める
まとめ:自分の“暴落ルール”を持とう
底は誰にも当てられない。けれど“どう動くか”は決めておける。下落率の段階、投入額、弾薬の数、検証の手順――準備した人だけが、恐怖の中で淡々と前に進める。今日、あなたの買い増しルールを1枚に書き出そう。次の急落は“試験日”。答案はすでに用意しておく。
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